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◎水木しげる魂の漫画展(9月22日〜11月25日)


 

水木氏の直筆原画など多数展示


作品の背景には過酷な戦争体験


 今秋、龍谷ミュージアムでは「水木しげる 魂の漫画展」を開催いたします。日本漫画界の鬼才・水木しげる(本名= 武良茂)氏は1922年に生まれ、2015年11月に亡くなるまで、その93年間の生涯を現役で在り続けました。
 鳥取県境港で幼少期を過ごした水木氏は、武良家に出入りしていた子守の〝のんのんばあ〟に連れられ、近所のお寺(曹洞宗巨嶽山 正福寺)で見た『地獄極楽絵図』に心を奪われ、以来、目に見えない世界に魅入られるようになります。
 成年となった水木氏は、戦地に召集され、激戦地・ラバウルで理不尽に多くの命が失われていく様を目の当たりにします。それとともに、自身も片腕を失い、生と死の境をさまよう壮絶な体験をします。そして復員後、この過酷な体験からますます見えない世界に注目し、魂や妖怪たちが往来する世界に創作のヒントを見出すようになるのです。
  40歳を過ぎた遅咲きのメジャーデビューを果たすまでの極貧生活時代から、押しも押されもせぬ超人気作家になってからも、水木氏は独自の画風を模索しながら、戦争で失われた命への強い思いと、この世に生きる人々へのメッセージともいえる作品を全身全霊で描き続けました。
 「ゲゲゲの鬼太郎」に代表される妖怪漫画で有名になった水木氏ですが、ユーモアと皮肉、創造性にあふれる短編の数々や、己の体験を基にした誰にも真似のできないリアルな戦記物、さらには歴史上の個性的な人物を独自の視点から描いた評伝など、妖怪以外の漫画作品においても高い評価を得るようになります。
 また、近年発見されたデビュー前に描いたスケッチの絵の数々からも、その画力の非凡さがうかがわれ、漫画家としてのスケールの大きさをあらためて世に知らしめています。


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作画に用いた道具類も展示


 本展覧会は漫画家「水木しげる」の、こうした多彩な画業に迫り、その作品の尽きない魅力を探求するものです。
 会場では、水木氏の生原稿やカラーイラストだけでなく、ヨーグルトの小瓶を利用した絵の具入れなど、実際に作画に用いられた道具類なども紹介します。原画の細密な描き込みや、スミベタのムラまで見られるよう、展示方法にも工夫を凝らしました。
 そのほか、水木作品の原点ともいえる、前述の鳥取・正福寺蔵『地獄極楽絵図』の複製パネルや、特別出品として、仏教や民俗学からの影響が色濃くうかがえる作品4点(展示替えあり)を紹介するコーナーもあります。こちらもどうぞお見逃しなく。
 ところで、水木氏が浄土真宗本願寺派のご門徒であったことはご存じでしょうか。
 水木氏のお墓は、水木プロダクション近くの東京都調布市の覚證寺にあります。このお墓は、水木氏が60 代に建立したもので、門柱には鬼太郎とねずみ男の石彫、柵には砂かけばばあや子泣きじじい…お馴染みの妖怪たちが浮彫りされ、一見して水木氏とわかる意匠が施されています。今もお参りするファンからのお花が絶えないとか。
 「好きなことをやりなさい」「なまけ者になりなさい」と、自身の人生や価値観にまっすぐに向き合った水木しげる氏。ぜひ会場に足を運んでいただき、その〝魂〟を感じ取っていただければ幸いです。 (龍谷ミュージアム学芸員・村松加奈子)

■龍谷ミュージアム
 京都市下京区堀川通正面下る(西本願寺前)
 075(351)2500
 ホームページ http://museum.ryukoku.ac.jp/
 開館時間:10 時〜17時 ※16 時30 分までに入館
 休館日:月曜日(祝日の場合は翌日)
 入場料:一般1200 円、高大生800 円、小中生400 円