2013年10月1日「被災地を見つめた高校生たちの夏④」〜筑紫女学園高校 最終回〜
「小さな勇気」を出した生徒たち
「『被災地に笑顔を』とみんなで過ごした時間は私の財産。小さな勇気を出して参加を決意した3カ月前の私に『よくやった!』と伝えたい」
高校生の復興支援イベント「フラガールズ甲子園」(8月25日、福島県いわき市)に出場した宗門関係の筑紫女学園高校(中嶋利昭校長、福岡市中央区)の生徒の一人が、仲間と共に踊った夏をこう振り返った。
8人中6人はダンスが初めてという初心者のチーム。大会ひと月前、取材で訪ねた時の少し不安そうに振り付けを受けていた表情とは見違えるような目の輝きが、学びの大きさを物語っていた。
福島では本番前日、原発事故で避難を強いられていた地域を見学し、仮設住宅と高齢者施設でフラを踊った。生徒たちは「笑顔を届けることが目的。フラの成績よりも被災地を肌で感じることを大切にしたい」と臨んだが、人けがなく静まり返った町や「『仮』の生活が普段の暮らしになっている」様子に、復興への厳しさを突き付けられた。
その中で彼女たちの心を動かしたのが「同年代の人たちが頑張っている姿」。おじいちゃんやおばあちゃんを笑顔にしている施設の職員や、華やかなフラのステージを支えているボランティアスタッフは同世代の若者だった。「被災地の人は苦しんでいると勝手に思い込んでいた」という彼女たち。被災地の若者の姿に勇気をもらい、逆に励まされた。
「『東北の支援に』と手を挙げた私たちが、福島や多くの人のおかげで全国の高校生とつながってフラを躍らせてもらっている」という感謝の思いは、「私たちがここでフラを踊ることが東北の人の小さな希望につながっている」という強い気持ちに変わっていった。
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この夏、多くの高校生が東北を訪れ、「私に何ができるか」と問い続けた。答えが見つかったかどうかよりも、それぞれの胸に生まれた「小さな勇気」が光り輝いていた。一人の生徒が感想の中に「最高の青春」と記していた。被災地と共に成長する姿が見えた。
(本願寺新報 10月1日号より転載)
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